本文へスキップ

Kokura Law Office 福岡県弁護士会 北九州部会 西小倉駅徒歩2分

TEL 093-571-8723

803-0811 北九州市小倉北区大門2丁目1-8コンプレート西小倉7F

労働災害発生時のリスク管理

企業にとっては、労働災害(労災)の発生は悩ましい問題です。

100名以上の従業員を抱える企業等であれば、労働災害(労災)の発生は、保険料の増額につながる可能性がありますし(労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項)、負傷者や死亡者の遺族から会社に対し損害賠償請求がなされるリスクもあります。労働保険未加入の企業であれば、さらに大きな損害発生のリスクもあります。もちろん、このような法的な問題だけでなく企業の社会的評価の低下、取引打切り、従業員の士気低下など法的リスク以外のリスクもあります。

このような事情もあり、労働災害(労災)の事実をできる限り認めないような対応をされる企業も多いのですが(いわゆる労災かくし)、行き過ぎた対応は法令違反となることもあります。

労働災害(労災)が発生し労働者が死亡または休業した場合には、事業主は、労働基準監督署長に対し労働者死傷病報告等を提出する義務があります(労働基準法施行規則第57条1項3号、労働安全衛生規則第97条)。また、労働者から保険給付申請書の事業主証明欄への記入を求められたときは、事業主はこれに応じる義務があります(労働者災害補償保険法施行規則23条2項)。

ですから、企業が明確に労働災害(労災)の発生を認識しているにもかかわらず、届出を怠ったり、事業主証明の記入を拒絶することは法令違反となります。

しかしながら、従業員が労働災害(労災)の発生を主張したとしても、企業としては直ちにその主張の真偽がわからない場合も当然あります。

このような場合には、従業員の主張だけに基づき上記の届出や事業主証明をすることは絶対に避けるべきです。

真偽不明にも関わらず安易にこのような対応をすれば、会社は従業員の主張を認めたことになり、事後的に従業員の主張が虚偽であることが判明した場合(負傷はしたが休日のスポーツの際の事故に起因する等)でも、これを覆すのは難しくなります。

真偽が分からないの場合には、まずは会社内で当該従業員や他の従業員のヒアリングをするなど徹底的に調査をすべきです。

それでも、労働災害(労災)の発生自体が不明の場合には、会社が労働災害(労災)の発生を認識できない以上、上記の届出義務はありません。

また、事業主証明についても、会社には証明できる事実がないためこれに応じる義務はありませんし、別途、会社の意見書を提出することも可能なので(労働者災害補償保険法施行規則23条の2)、会社の調査の結果およびそれに基づく会社の見解をまとめて提出しておくべきです。

調査の結果、労働災害(労災)の発生の事実自体は認めざるを得ない場合でも、後々の訴訟に備えて、会社に過失があるかという点までこの段階でできる限りの調査を尽くしておくべきです。

労働災害は、会社に故意・過失がない場合でも保険給付の対象とされますが、民事訴訟における損害賠償請求の場面では、会社に故意・過失がなければ、会社は責任を負わないのが原則です。つまり、「労働災害の発生=会社の損害賠償責任肯定」という関係にはないので、事前に準備をしておくべきということです。

また、労災申請には時効(内容に応じて2年または5年)があります。時効期間を過ぎた申請は適法ではないので、この場合も労働者からの申請には応じなくてよいと考えられます。

※以上は業務災害の場合に妥当する議論です。通勤災害は保険料増額事由にはなりませんし、一般的には会社が損害賠償請求を受けることも想定しにくいので、リスク管理の要請は相対的には低いと言えます(この点については勘違いされている企業も多いようです)。

バナースペース

小倉総合法律事務所

〒803-0811
北九州市小倉北区大門2-1-8
コンプレート西小倉7階

代表弁護士 川上 武志
(福岡県弁護士会北九州部会)


TEL 093-571-8723
FAX 093-571-8724
info@kokura-lawoffice.com

受付時間
平日  9:30~17:30
土日祝 不定期に営業

※受付時間内でも弁護士が不在にしている場合がございますので、ご了解ください。