離婚の法律相談
不貞行為(浮気・不倫)の慰謝料請求
民法上、不貞行為(浮気・不倫)は不法行為(民法709条、最高裁昭和54年3月30日判決)となるため、あなたの配偶者が不倫をしている場合、配偶者の不倫の相手に対して損害賠償請求(慰謝料請求)をすることが可能です。この慰謝料請求をなす場合の問題点についてまとめてみます。
- 1 不貞行為の証拠がない場合
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不倫・浮気は、当事者だけで秘密裏に行われることがほとんどなので、確たる証拠が揃わないこともあります。
証拠が揃わない時点で不倫や浮気と決めつければ、相手が証拠隠滅を図ることもありますし、相手から逆に訴えられるリスクもあります。ですから、不貞行為による慰謝料請求をするためには、まずは最低限の証拠を確保することから始める必要があります。 - 2 不貞行為の相手に故意・過失がない場合
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配偶者が不倫をしていたとしても、相手に故意・過失がなければ慰謝料請求をなすことはできません。よくあるケースとしては、配偶者が相手に対し「未婚である」と虚偽の説明していた場合です。ただし、このような説明をしていた場合でも、既婚であることを知った後も不倫関係を継続していれば慰謝料請求は可能です。
また、希に相手から「不倫だとはわかっていたけど真剣に交際していた。遊びではない。」という主張がなされることがありますが、たとえ真剣につきあってたとしても慰謝料請求は可能です(上記最高裁判決)。 - 3 婚姻関係が既に破たんしている場合
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形式的には離婚をしていない場合でも、実質的に婚姻関係が破たんしている場合には、たとえ配偶者が不倫をしても慰謝料請求をなすことはできません(最高裁平成8年3月26日判決)。不倫の時点で、既に長期間別居状態になっていた場合等のケースでは慰謝料請求が認められないことがあります。
- 4 いわゆるダブル不倫の場合
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配偶者の不倫相手も既婚者であった場合、あなたは不倫相手に対して慰謝料請求をなすことができますが、不倫相手の配偶者もあなたの配偶者に対して慰謝料請求をなすことができます。この場合には、家庭全体の収支でいえばプラスマイナスゼロとなり、経済的には意味がないことになります。ただし、不倫相手の配偶者があなたの配偶者に対し慰謝料請求をしてくるかは事例によって異なりますし、お金の問題以外の点で(二度と関係を持たない等)示談をする必要はありますから、まずは弁護士に相談されることをお勧めします。
- 5 配偶者に対する慰謝料請求
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配偶者が浮気をした場合、浮気の相手だけでなく、配偶者に対しても慰謝料請求をすることはできます。配偶者の浮気を原因として離婚をする場合には、この慰謝料請求権を行使することがほとんどです。
他方、離婚をしない場合には、配偶者から慰謝料を取得しても、家庭全体の収支は変わらないので、配偶者に慰謝料請求をすることはほとんどありません。しかしながら、法的には請求は可能なので、夫婦で厳格に財産を分けて管理している場合等であれば配偶者に慰謝料請求をされる方もいます。 - 6 慰謝料の相場
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慰謝料の額は、不倫に至る事情、不倫の期間、不倫が離婚や婚姻関係破たんの直接的な原因になったか、不倫が原因で家族が過酷な負担を強いられたか、不倫相手の態度の誠実性等の様々な事情から総合的に決定されるため、一律に金額を算定することはできませんが、通常は100万円程度から多くても300万円程度だと考えられます。
- 7 相手の支払能力の問題
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法的に慰謝料請求が認められる事例で、仮に、裁判で勝訴しても、相手に慰謝料の支払能力がなければ現実に慰謝料を回収することは難しくなります。弁護士に依頼される場合には、相手が支払に応じない場合に備えて、あらかじめ慰謝料の回収方法についても検討しておく必要があります。
- 8 刑事罰
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不貞行為の法律相談の際には、被害届を出して不倫の相手を逮捕してもらいたいというご相談を受けることもありますが、現在の刑法では不貞行為は犯罪とはならないため、この点については難しいということになります。
当事務所の弁護士は、被害者側・加害者側問わず、不貞行為の法律問題にも多数の業務経験を有しております。
不貞行為の法律問題でお悩みの方は、是非、当事務所にご相談ください。