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契約書は万能ではない

契約書の作成やチェックのご依頼をいただいていると、どうしても契約書の内容の完成度ばかりに意識がいきがちです。
しかしながら、契約書の内容をどんなにすばらしいものにしても、それだけで紛争予防や履行の確保が確実にできるとはいえません。

弁護士になって間もない頃にご依頼をいただいた訴訟案件について、緻密な和解条項を作成しようと尽力していたところ、ご担当の裁判官から「どんなに細かく条項を作成しても、将来のリスクを完全に排除することはできない。それよりも大事なことは、今後、問題が発生したときに当事者間でしっかりと話し合いができるだけの信頼関係の構築だ。」と言われたことがあります。
当たり前の話ですが、将来、当事者間に起こりうるすべてのリスクを予想して契約書に盛り込んでいくということはできませんし、仮に、それができたとしても、その全てについて当事者双方の合意を得ていくことはほぼ不可能でしょう。この意味で、契約書は決して万能にはなりえません。
契約書の作成者の立場からすれば、できる限りリスクを予想して契約書に盛り込んでいくことや、できる限りこちらに有利な契約書の作成に努めることも大切なことですが、それと同時に、フェアな契約交渉を通じて相手方との信頼関係の構築に努めることが、何よりも紛争予防に効果的であるということも頭に入れておくべきです。

また、どんなに素晴らしい契約書でもあっても履行意思がない者との間の紛争は回避できません。
例えば、初めから金員を詐取して逃げると決めて取引をする者との間で完璧な契約書を作成しても、実際に、契約の相手が金員を受領して逃げてしまえば、それを追うのは簡単なことではありません。そこまで極端な話でないとしても、契約後の事情で信頼関係が失われ、相手が契約内容の履行に応じないこともあります。相手が契約内容の有効性を全く争っていなくても、その履行に応じないということは、実務上も珍しいことではありません。このようなケースでも、最終的には訴訟提起や強制執行で契約内容を実現することもできるかもしれませんが、そのためには多大な時間とコストを費やす必要があります。この意味においても契約書は万能とは言えません。

さらに、どんなに素晴らしい契約書であっても履行能力のないものに契約内容を強制することはできません。
例えば、契約上、相手方に金銭の支払義務があるとしても、相手方が現実に資産を有していなければ、義務の履行をすることはできません。たとえ、相手方が極めて誠実で、一生懸命義務を果たそうとする人間であっても、不可能なことは強制できません。相手方が破産してしまった場合も同様です。このようなケースでは、契約書の内容が完璧かどうかということは全く関係がない問題になります。この意味においても契約書は万能とは言えません。

このような例から分かることは、紛争に巻き込まれるリスクを回避するために最も大切なことは、契約書の内容を完璧にすることではなく、契約の相手が信頼できる相手(履行意思、履行能力があり、契約書に記載されていない問題が発生した時には誠実な協議に応じてくれる相手)かどうかを見極めることだと言えるでしょう。

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